学術情報

インプラント周囲新生骨のLow-Intensity Pulsed Ultrasound(LIPU)による経時的観察

高木宏太、梶本忠保、伊藤範明、米田征司、山本宏治

朝日大学歯学部口腔機能修復学講座

目的

当教室ではこれまでの検索で、インプラントの治療期間を短縮を目的とし低出力超音波パルス(low-intensity pulsed ultrasound:以下LIPUと略す)照射が、オッセオインテグレーション獲得にどのような影響を及ぼすかについて雑種成犬を用いて検討してきた。その結果、インプラント埋入部に出力条件、定格電圧:AC100V、定格周波数:50/60Hz、超音波出力:40mW/cm2、パルス幅:2ms、パルス周期:10ms、総出力:240mW、発振周波数:3.0MHzのLIPU照射を1日15分間行うことで、インプラント体周囲の骨組織形成が促進され、早期にインプラント体と周囲骨組織との骨接合が獲得できることを明らかにしている。

その一方、これまでの報告ではLIPU照射が、1週間の期間であり組織学的にさらなる経時的な新生骨の量的ならびに質的変化の追跡が必要であると考える。また、インプラント体周囲に形成される新生骨の計測のために、骨計測用インプラント体を作製し実験に供したところ、それらの供試材料の表面は陽極酸化膜処理を施したものであり、インプラント体周囲の新生骨はその表面性状に影響を受けるという報告がある。そこで今回、LIPUにて形成促進された新生骨の12週間におよぶ経時的な量的ならびに質的変化、さらにLIPUを応用するに当たってインプラント体の表面性状により新生骨がどのように影響を受けるかについて検討した。

材料および方法

骨計測用インプラント体

骨計測用インプラント体

LIPU照射によるインプラント体周囲の骨組織形成量の組織形態計測法による定量のために、骨計測用インプラント体を作製した(Fig.1)ffまたこのインプラント体に皮膜厚さ約10μmでハイドロキシアパタイトコーティング(以下HAと略す)を施し、インプラントの表面性状の異なる2種類の骨計測用インプラント体を本実験に用いた。

実験動物

体重10〜12kgの生後約1年のビーグル犬9頭を用い、成犬をケージ内にて1頭ずつ、犬用固形飼料および水道水を与えて飼育を行った。

インプラント埋入術式およびLIPUの照射方法

実験犬は、塩酸ケタミン(ケタラール50、三共エール薬品株式会社製)25mg/kgを筋注後、ペントバルビタールナトリウム(Nembutal、Abbott Laboratories、U.S.A.)25mg/kgの静脈内注射で全身麻酔を行い実験を行った(Fig.2)。なお、LIPU照射は超音波治療用ゲルを用い、頬側歯肉粘膜部を照射部位とした。

非脱灰研磨標本の作製

2%グルタールアルデヒド(0.1M phosphate buffer、pH7.4)による灌流固定後、下顎骨を一塊として摘出し、4℃、7日間、同固定液にて浸漬固定を行った。X線撮影にて埋入した骨計測用インプラント体の位置を確認し、下顎骨標本を近遠心的に約20mmのブロックに整形した。

その後、流水下にて洗浄し、アルコール上昇系列で脱水、アセトンによる脱脂後、Villanueva bone stein13)(以下V. bone-steinと略す)染色を施し、メチルメタクリレートモノマー(和光純薬社製)を用い、低温下で約30日間、緩徐に重合させ包埋を行った。つぎに再度X線撮影をおこない、埋入されたインプラント体の位置を確認し、その中心部を頬舌的にSaw Microtome (SP1600, LEICA社製)にて二分割し、厚さ約30μmの非脱灰研磨標本を作製した。

非脱灰研磨標本による新生骨量の測定

光学顕微鏡(SZX12、OLYMPUS社製)下で観察後、全自動顕微鏡写真撮影装置(PM-3 OLIMPUS社製)にてデジタル撮影を行い、画像解析ソフト(Scion Image、Scion Corporation、U.S.A.)下で切片上の骨計測用スペース内に形成された新生骨組織面積を測定し、骨計測用スペースに対する新生骨組織面積の占める割合を骨組織面積率として算出した(Fig.3)。また、得られた成績の有意性の検定をStudent t-testにて行った。

骨計測用インプラント体

Time Table

Time Table

結果

2W

TiC群

TiC群

インプラント体周囲の既存骨の一部に拡大したフォルクマン管が認められた。骨計測用スペース内には、線維性の細胞が認められ、その中に濃染した新生骨梁の形成が認められた。骨計測用スペース中央部では、既存骨から形成されたと思われる新生骨が認められ、インプラント体表面には数層の核および細胞質の不明瞭な線維性の細胞層が認められた。また、骨計測用スペースの隅角部には壊死細胞が認められ、骨計測用スペース内の組織とは明瞭に境界されていた。

HAC群

HAC群

骨計測用スペース内は新生骨梁の形成が顕著で、中央部で、既存骨からの骨の新生を伴う線維性の細胞が認められただけでなく、インプラント体表面にも、これに沿って新生骨組織を認めた骨計測用スペース隅角部でも、これを満たすように新生骨梁の形成が観察された。

TiT群

TiT群

既存骨のフォルクマン管やハーバース管の拡大が著明に認められた。骨計測用スペース内は新生骨梁の形成が顕著で、中央部で、既存骨からの骨の新生を伴う線維性の細胞が認められただけでなく、インプラント体表面にも、これに沿って新生骨組織を認めた骨計測用スペース隅角部でも、これを満たすように新生骨梁の形成が観察された。

HAT群

HAT群

骨計測用スペース内は新生骨梁の形成が顕著で、中央部で、既存骨からの骨の新生を伴う線維性の細胞が認められただけでなく、インプラント体表面にも、これに沿って新生骨組織を認めた骨計測用スペース隅角部でも、これを満たすように新生骨梁の形成が観察された。非照射群に比較して若干新生骨が、多いように思われる。

4W

TiC群

TiC群

2週後の像と比較して既存骨からインプラント体周囲へ向かって進展している新生骨の量も増加している。

HAC群

HAC群

2週後の像と比較して既存骨からインプラント体周囲へ向かって進展している新生骨の量も増加しており、その量は照射群チタン合金インプラント埋入手術4週後の組織学的所見と同等であるように観察される。

TiT群

TiT群

2週後の像と比較して既存骨からインプラント体周囲へ向かって進展している新生骨の量も増加しており、その量は非照射群チタン合金インプラント埋入手術4週後の組織学的所見と比較してかなり多く、インプラント表面に接する新生骨の割合も照射群チタン合金インプラント埋入手術2週後の所見と比較しても増加傾向にあるといえる。

HAT群

HAT群

骨計測用スペース内は新生骨梁の形成が顕著で、中央部で、既存骨からの骨の新生を伴う線維性の細胞が認められただけでなく、インプラント体表面にも、これに沿って新生骨組織を認めた骨計測用スペース隅角部でも、これを満たすように新生骨梁の形成が観察された。非照射群に比較して若干新生骨が、多いように思われる。

12W

TiC群

TiC群

4週後の像と比較して既存骨からインプラント体周囲へ向かって進展している新生骨の量も増加しており、骨の成熟度も4週時に比較して観察される。

HAC群

HAC群

2週後の像と比較して既存骨からインプラント体周囲へ向かって進展している新生骨の量も増加しており、その量は照射群チタン合金インプラント埋入手術4週後の組織学的所見と同等であるように観察される。

TiT群

TiT群

骨計測用スペースの大半は、新生骨によって満たされておりその量は、非照射群チタン合金インプラント埋入手術2週後の組織学的所見と比較しても明らかに新生骨の量は、多い。

HAT群

HAT群

骨計測用スペース内のほとんどは、新生骨で満たされ、新生骨によりインプラント表面が覆われている。

骨計測用スペース内の新生骨面積の測定

骨計測用スペース内の新生骨面積の測定

考察

以上の成績から病理組織学的所見において骨計測用スペース内での実験期間内では、どの期間においても同一表面性状であれば、実験側の照射群の方が対照側である非照射側よりも多くの新生骨が観察され、デジタル装置を用いた新生骨量の測定から、有意差が存在するこが確認された。これは、LIPUはチタン表面、アパタイト表面どちらにおいても効果がありその効果は、経時的に持続していることが確認された。

また、デジタル装置を用いた新生骨量の測定から、TiT群とHAC群では、手術後4週において危険率5%以下の有意差が存在するもののそれ以外の期間では、有意差が存在しないことと、病理組織学的所見において各期間においてTiT群とHAC群ではその組織像に大きな違いが認められないことから、広く知られているHAが有しTiが有さない骨伝道能と同様の刺激をLIPUが持っていると考えられる。

また、骨計測用スペース内での実験期間内において、どの期間においてもHAT群が、TiT群よりも多くの新生骨が観察され、デジタル装置を用いた新生骨量の測定からも有意差が存在することが確認された。これは、LIPU照射がTi表面より HA表面により有効であるように思われる。これは、HAが本来有する伝道能に先ほど考察したLIPUが有するとした伝道能が加わったためなのかあるいは、その表面形状により超音波が反射されその効果が促進されたかは、明らかではなく今後の研究課題としたいと考える。

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