学術情報

炭酸含有アパタイトを担体とした骨髄細胞の培養に与えるLow-Intensity Pulsed Ultrasound (LIPU)の影響

伊藤範明、高木宏太、堀田康明、梶本忠保、山本宏治

朝日大学歯学部口腔機能修復学講座

目的

骨補填材として自家骨が最も適しているものの、骨採取のため外科的侵襲が加わり、さらに量的な制限も受ける。これに反し、人工骨補填材は、安定性、安全性に優れ、使用量に制限を受けないことや自家骨などの材料採取にかかわる外科的侵襲を必要としないことから臨床応用に有利である。本実験に用いた炭酸含有アパタイト(Carbonate Apatite :以下 CAp と略す)は物理化学的性状は骨アパタイトに類似し、組織親和性、吸収性に優れている。

そこで、CApの多孔体ブロックを作製し、それを担体としてラット骨髄細胞を培養し、in Vitro において新生骨の形成に有用である低出力超音波パルス(伊藤超短波製: Low-Intensity Pulsed Ultrasound : 以下 LIPUと略す)を用い、その刺激による培養への影響を検索し、in Vivo においてラット背部皮下に埋入し、LIPU照射により母床からの骨伝導のない環境下で早期骨形成を試みた。

実験方法(材料と方法)

7週齢SD系雄性ラット2匹の大腿骨より骨髄細胞を採取し、直径60mmのシャーレ上にて、αーMEMに15%FBS、10mMβーグリセロリン酸Na、10-8Mデキサメタゾン、50μg/mlアスコルビン酸を添加した培地にて5%CO2 インキュベーターにて7日間の初代培養後、96穴マルチウェルプレートにCApブロックを足場として細胞を3×103cells/wellで播種した。

in Vitroにおいてプレート底部より発振周波数3.0MHzにて1日15分間を3日間施行したものを実験群とし、非照射群を対照群とした。試料の一部を走査型電子顕微鏡(ScanningElectronMicroscope:以下SEMと略す)にて観察を行った。また、in Vivoにおいて同系ラット背部皮下にネンブタール全身麻酔下にてCApブロックを埋入し、術後3日後より実験群において7日間LIPUを照射、その後屠殺、ブロックを摘出・通法にて10%ホルマリン固定後、脱灰組織標本とし組織学的検索を行った。

CAp試料の作製

300~500μmのCAp顆粒をCApスラリと混ぜ、高さ5mm、直径5mmの紙製円柱の枠に填入し、750℃2時間にて焼結し、多孔体ブロックとした。

SEM観察試料の作製

プレート内の培養液を吸引後、PBS(-)にて3回洗浄後、2%グルタール アルデヒド(pH7.4 PBS)にて固定後、アルコール上昇系列にて脱水臨界点乾燥後、オスミウムコーティングを施しSEM(S-4500日立)にて、加速電圧5kVの条件下で形態観察を行った。

脱灰組織標本の作製

10%ホルマリン(pH 7.4 PBS)にて固定後、15%EDTA溶液(pH7.3)にて3日間浸漬し通法によりパラフィン包埋後・厚さ3μmの切片とし、各染色を通法により施し光学顕微鏡にて観察を行った。

結果

SEM

対照側

3日目のSEM所見です。
細胞は局在に観察され、その局在部分のSEM像を示している。細胞の形態は球形を呈しており、明瞭な突起は認められなかった。

実験側

LIPU照射群における3日目のSEM所見です。
対照群と異なり、細胞突起が顕著に観察され、CApへの付着像が観察される。また、付着細胞数に関しては対照群より多い傾向にあった。

組織

対照側

in Vivoにおける対照群のH.E.染色とAzan染色を施した脱灰組織標本です。CApは軟組織に被包されており、CAp内部に将来的に骨へ分化していくであろうと思われる所見はありませんでした。

実験側

in vivo における実験群のH.E.染色とAzan染色を施した脱灰組織標本です。CApは対照群と同様に被包化されておりました。ほとんどのCAp内部は対照群と同様に骨へ分化していくであろうと思われる所見はありませんでしたがH.E.所見に一部骨様組織と思われる像が認められましたがAzan染色にて確認できませんでした。

SEMによる形態観察

対照群×200

対照群×200

対照群×500

対照群×500

SEMによる形態観察 LIPU照射群

SEMによる形態観察

H.E.染色 対照群×40

H.E.染色 対照群×40

H.E.染色 対照群×100

H.E.染色 対照群×100

Azan染色 対照群×40

Azan染色 対照群×40

Azan染色 対照群×100

Azan染色 対照群×100

H.E.染色 照射群×40

H.E.染色 照射群×40

H.E.染色 対照群×200

H.E.染色 対照群×200

Azan染色 照射群×40

Azan染色 照射群×40

Azan染色 照射群×200

Azan染色 照射群×200

考察

SEMによる形態観察で、初期の細胞分化・ 増殖にLIPUの影響をおよぼすことが示唆された。
脱灰組織標本より、LIPU照射群および対照群ともに明瞭な差は認められなかった。

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