歯科情報

インプラント症例への超音波治療器の臨床的応用に関する報告

南清和、安賀稔

目的

近年インプラント治療の普及が進むにつれフィクスチャー埋入から上部構造を装着するまでの期間を短縮させるために、様々な治療法が試されており、超音波治療器もその一つです。しかしながら本治療器は、臨床症例が少なく、実際、その効果ならびに副作用については不明な点が多い。

当医院においても患者からの治療期間の短縮を望む声が多い為、オッセオインテグレーションを早めると言われている超音波治療器を患者の了解を得た上で使用したところ、有効であろうと思われる結果を得たので報告いたします。

方法

被験者は、当医院にインプラント治療を希望され来院された患者を対象とし、起こりうる副作用等を充分に説明し使用の同意を得ました。

欠損部位にインプラント埋入し抜糸後つまり術後1週後から1週間の間超音波を朝、晩2回ずつ使用しました。設定は発振周波数:3.0MHz、パルス幅:2ms、パルス周期:10ms、総出力:240mWとしました。

方法

症例1:50歳女性

方法

M

 計3本

M

 計4本

ブローネマルク タイユナイトマークⅢ

方法

その後、同部位を抜糸時、術後3W、術後1Mごとにアルミステップを用い、X線撮影と口腔内の状態を撮影しました。

X線写真濃度測定法

X線写真濃度測定法

富士のdensitometer 301形を使用し、患部のX線写真と同時に撮影したAl-stepの 1~6までの濃度ならびに、インプラント体周囲計10点を一点につき三回測定し補正値を算出し、インプラント体の頚部、体部ならびに先端部のX線濃度の測定を行いました。

結果

症例1

右側照射抜糸時

右側照射抜糸時

右側照射術後3W

右側照射術後3W

左側非照射抜歯時

左側非照射抜歯時

左側非照射術後3W

左側非照射術後3W

症例2

右側照射抜糸時

右側照射抜糸時
左側非照射抜歯時

右側照射術後3W

右側照射術後3W

左側非照射術後3W

左側非照射術後3W

症例1、症例2で抜糸時に緩開している右側にLIPUS照射を行いました。その結果3週後には、緩開していた切開創傷が閉鎖し非照射側に比較して炎症も少ないように思われます。

micro-densitometery法による計測値

micro-densitometery法による計測値
micro-densitometery法による計測値

MD法にてインプラント体周囲の黒化度を経時的に測定した結果です。 抜糸時の黒化度を1として骨密度が向上するにつれて数値が大きくなるように表示しております。頚部において照射側も非照射側も術後3週後には、骨密度が、低下しますが、照射側においては、1ヶ月後には、抜糸時の骨密度より向上していました。しかし、非照射側では、1ヶ月後には、抜糸時の骨密度よりもわずかに劣っていました。

一方、体部、先端部において非照射側では、術後3週後には、骨密度が、低下し1ヶ月後に3週後よりも回復するものの抜糸時の水準には、戻っていませんでした。しかし、照射側においては、骨密度は、経時的に増加していました。

考察

  • 症例1で抜糸時に切開創が緩開している右側にLIPUS照射を行い3週後には、緩開していた切開創傷が閉鎖したことは、LIPUS照射の効果のひとつであると思われます。
  • MD法の結果からLIPUSを照射しなければインプラントは、埋入直後から少なくとも1ヶ月は、骨が吸収される機転にあり埋入直後より緩んだ状態にある可能性が示唆されました。
  • 一方、LIPUS照射を行ったインプラントは、頚部、体部、先端部において非照射の場合よりも早い段階 で骨密度の上昇が確認されているので、インプラントの埋入にLIPUSを用いればインプラ ント表面により確実にオステオインテグレーションを起こせると考えられます。
  • 早期加重を行うに当たりLIPUSを応用することにより成功率の向上がはかれる可能性が示唆されました。

結論

結論

LIPUS照射の応用によりインプラント周囲骨の骨密度の上昇が早期から観察された。

解説

超音波治療器を使うことによって歯肉の治りが良く、骨も早くに治癒することが考えられます。
これは今までより安全・確実にインプラント治療の治療期間を短縮出来ることになるでしょう。

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