地域密着型病院における物理療法機器を活用したリハビリテーション

姫野病院
「地域の駆け込み寺であり続けたい」という想いのもと、救急から在宅⽀援まで幅広く地域の医療を⽀えている福岡県⼋⼥市の医療法⼈ ⼋⼥発⼼会 姫野病院。整形外科(リハビリテーション科)、内科、⼩児科を中⼼とした診療のほか、通所リハ(デイケア)や有料⽼⼈ホームも併設しています。今回は、病院の特⾊などを企画管理室・企画広報の川上さんに、病棟でのリハビリについて理学療法⼠の江副さんに、通所リハについて作業療法⼠の⼭本さんに伺いました。
整形外科専⽤Webサイトの開設や各階フロアに世界の国名をつけるなど、ユニークな取り組みをされていますが、このほかに他院にはない特⾊はございますか?
川上さん⼀番の特⾊は、病室が全室個室(個室料なし)という点です。個室にすると認知症などが進⾏するのではないかという懸念もあったのですが、睡眠時間が⻑くなるなどプラスの⾯が多く⾒受けられました。感染症対策としても機能しており、コロナ禍の際でも面会を続けられ、近隣の他院と比べてクラスターの発生も抑えることができました。こういった感染症対策のおかげでターミナル期の方の転院や、新型コロナ患者様の受け入れが頻繁に行われ、外来も含めてコロナ禍の間で1.5倍から2倍くらいに患者様が増えました。二つ⽬の特⾊としては、病棟にリハビリ室がないことです。隔離された部屋でリハビリを⾏っても、職員同⼠やご家族の間で患者様がどこまで動けるのかなどの情報共有が難しいからです。病棟の中心にある広くオープンな場所でリハビリを⾏うことで、ご家族も⾯会の時に様⼦も⾒られて、進捗をみんなで共有できています。各階フロアに国名をつけているのも、患者様に楽しく移動していただきたいという想いからはじまっています。「今、フランスにいるから洗濯物を持ってきて」など、⾯⽩い会話も⽣まれています。

貴院は地域に開かれていて、イベントも積極的に⾏っているとお聞きしました。
川上さん法⼈のスローガンが「地域の駆け込み寺であり続けたい」ということで、最終的に当院に相談に来れば⼤丈夫という環境をつくりたいと考えています。そうしたことから地域の皆さんとつながるイベントを開催していて、当院で夏祭りを、法⼈内の⾼齢者施設で秋祭りを開いたり、⾃治体と協働で地域のデイサービスに出向いてリハビリ体操を⾏ったりしています。コロナ禍前には、病院で婚活パーティーを⾏い、定員20名に対して120名の応募があるなど⼤盛況でした。また夏休みに⼩学⽣を対象にした職場体験も⾏いました。オペ室で電気メスを体験したり、お菓⼦を薬に⾒⽴てて分包したり、保護者の⽅も喜ぶような内容でした。このようなことに取り組むのも、地域があってこその病院だからです。地域が衰退すれば病院も衰退してしまうので、まわりを元気にして、病院も元気になろうという考えです。それから病院を⾝近に感じてほしいという願いもあります。病院は怪我や病気をした時にしか通わないので、どうしてもマイナスのイメージがつきまといます。また緊張を伴い⼼理的なハードルも上がるので、そのハードルを下げたくて、イベントを⾏ったり、共有スペースに漫画を1万8千冊ほど⽤意したりしています。

理学療法⼠の⽬線でみて、リハビリ室がないことによる利点は感じますか?
江副さん先ほどお話しがあったとおり各階の開けた場所にリハビリスペースがあり、看護師さんとすぐにADLなどを共有できるのがいいですね。以前に勤めていたところでは1階にリハビリ室があり、上の階に⾏ってもタイミングによっては情報を伝えられないということもありました。歩⾏練習をみた看護師さんが「ADLを上げられそうですね」と声をかけてくださることもあり、メリットを感じています。

リハビリテーション科で使⽤されているコンビネーション治療器についてお聞かせください。
江副さん超⾳波と電気刺激のコンビネーション治療器は、拘縮などがある慢性期の⽅に使っていて、手技と組み合わせることで⾼い治療効果を得られています。手技では届かない神経部分に対しては、TENS(経⽪的電気神経刺激療法)を使用しています。伊藤超短波さんの勉強会で教わったしびれ同調TENSを実践したら、患者様ご⾃⾝が気にならないレベルまでしびれが取れていきました。TENSの周波数と強度を患者様が感じているしびれのリズムと強度に合わせる必要があるのですが、患者様も初めてやることで何が正解かわからない状態なので、対話をしながら徐々に強度を上げつつ感覚をすり合わせています。また、骨の痛みに対してスクレロトームに沿ってTENSを流すと、痛みが引くケースもあるので積極的に使っています。腰椎の痛みを引かせたい方に使った際も、嫌な感じがなく歩けたというようなお声もいただき、驚いたと同時に使ってよかったと思いました。このように手技や運動療法では難しい部分では、物理療法の力に頼っています。一方でTKAなどの術後間もない方や捻挫や打撲のような急性期には、腫れを引かせ早期に運動療法や徒手療法に移行できるようにマイクロカレントなどを使っています。こちらはアイシングと組み合わせたり、炎症が治ったらホットパックを同時に使ったりしています。当院で使⽤しているコンビネーション治療器は4チャンネルあり、複数の患者様へ同時に使えたり、一人の場合も複数箇所へ同時に施術できるのが他の治療器に⽐べても汎⽤性があって重宝しています。

コンビネーション治療器を使った際の患者様の反応や評判はいかがですか?
江副さんホットパックの温熱などに⽐べると、超⾳波や電気刺激はなかなか体感的にわかりにくいところではありますが、膝や⾜関節の可動域が広がったりすると、「今までここが固かったんだね」と患者様の症状に対する理解が深まっているのを実感します。
理学療法⼠の皆さんの間で、勉強会などで得た知識の共有は⾏われていますか?
江副さん物理療法に詳しいスタッフが主体となって、リハビリ室内でも勉強会を⾏っています。先⽇も伊藤超短波さんの機器を使って、超⾳波と電気刺激の基礎的な使い⽅をやりました。知識には個⼈差があるので、「この患者様にはこれをやってみてはどう?」とディスカッションしながらお互いに⾼め合っています。せっかくいい機器があるので、どんどん使ったほうがいいと思っています。
通所リハではどのようなサービスが行われていますか?
山本さん徒手療法、トレーニングマシン、物理療法をご利用者様の希望に沿って行ったり、機器が空いている時間で使用してもらったり、その時々によって様々な流れでサービスを行っています。当施設は1時間半~2時間という短時間の中で機能改善に向けて複数のリハビリを行う必要があるので、次から次と受けてもらっています。はじめて来られた方には、身体の評価を行った上でプログラムの中からいくつか試していただいて、以降に使用するプログラムを決定しています。基本的には要支援1、2か要介護1の方が中心なので、マシントレーニングはご自分で設定しながらご利用いただいています。

通所リハでは物理療法機器をどのようにご活用されていますか?
山本さん電気刺激装置は主に利⽤者様の腰や膝、肩の痛みを和らげるために使っています。麻痺のある⽅には、EMSモードで筋収縮を起こすために活⽤しています。伊藤超短波さんから提案いただいたプログラムや膝関節に対するアプローチ⽅法、腰に炎症がある⽅への当て⽅などを⼤いに参考にさせていただいています。多くの利⽤者様が電気刺激による施術を希望されるので、4チャンネルで複数⼈が同時に使えるのはとても助かっています。こちらで使っている電気刺激装置はマルチバーストモードが使えて評判が良く、利⽤者様に他社製品も含めて試しにご利⽤いただき、ご意⾒を伺って導⼊しているので、非常に満⾜度が⾼い状況です。ご⾃⾝の痛みについてあまりお話しにならない⽅も、使っていくうちに効果を実感され、「実はここも痛くて」と症状を伝えてくださることが増えています。

今後、物理療法機器や弊社に期待することはありますか?
江副さん歩⾏リハの時にタイミングを狙って収縮を⼊れられるものがあると助かります。それから、使⽤時間が短縮できるといいですね。現状ではリハビリが終わって、コンビネーション治療器を病室に持っていってやってもらうこともありますので。患者様によっては⻑時間受け続ける場合もあります。できれば短い時間で多くの⽅が施術を受けられるようになるといいなと思います。
山本さん昔に⽐べたら性能が上がっていて、いつも助かっています。そう考えると特に要望はないですね。とても満⾜しています。

PROFILE
川上 勇貴 さん
企画管理室・企画広報
2011年医療法⼈⼋⼥発⼼会姫野病院に⼊職。介護職としてキャリアをスタートし、病棟や介護施設で培った経験を活かし様々な業務に携わる。地域ボランティアマネジメント室の⽴ち上げでは、地域住⺠との連携を深め、多様なニーズに対応するためのプログラムを企画・実施。現在は法⼈の広報・企画運営を通じて、医療・福祉だけでなく、地域住⺠との共⽣社会の実現に向けて取り組んでいる。

PROFILE
江副 匡紀 さん
理学療法⼠
2017年社会医療法⼈天神会古賀病院21へ⼊職。呼吸器チームに選任され、3学会呼吸療法認定⼠を取得。同グループの⽼健や通所リハビリテーションを経験し、多岐にわたる医療ニーズに対応。 2023年より医療法⼈⼋⼥発⼼会姫野病院にて勤務。訪問看護ステーション、⼀般病棟、地域包括ケア病棟を経験し、地域社会に貢献している。

PROFILE
⼭本 幸弘 さん
作業療法⼠
2009年柳川リハビリテーション学院作業療法学科卒業。卒業後、医療法⼈⼋⼥発⼼会姫野病院に⼊職。主に運動器リハでManual Therapyを学び、病棟リハ・外来リハ・久留⽶リハビリテーション学院講師などを経て現在は姫野病院通所リハビリテーション主任として勤務。「患者様のために地域のために」をモットーに⽇々業務に取り組んでいる。
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